●『株式会社アルソア本社見学記』
(記事:富士通 河野部会員、写真:三菱ビルテクノ 渡辺部会員)
 
FM情報環境研究部会では、部会員の相互理解を目的として、毎月各部会員のオフィスをお借りして、研究部会を開催しておりますが、今回は1998年の山梨県建築文化賞、1999年の日経ニューオフィス賞の環境奨励賞、1999-2000グッドデザイン賞(施設部門)などを受賞し、日本建築学会作品選集2000にも掲載されている、株式会社アルソアの本社にて研究部会を開催いたしました。
そのさい、同社の様々な施設を見学させていただきましたので、ご紹介いたします。
アルソアは、もともとアルソア央粧として渋谷に本拠地をおき、
基礎化粧品の訪問販売などを手がけておられましたが、阪神大震災をひとつの契機として、本社移転を決意され、約3年半前にこちらへ移転されたそうです。
同社の本社は、新宿駅から約2時間の中央本線の、蓼科、八ヶ岳連峰、南アルプスの近くにいだいた長野県との県境に位置する、山梨県小淵沢の豊な自然環境に恵まれた場所に建てられております。

■実施概要
 

・ 日時:2001年10月17日(水)13:00〜18:00
・ 場所:山梨県北巨摩郡小淵沢町2691 株式会社アルソア本社
・ 訪問者:氏家(部会長)、古本(副部会長)、山村、戸田、河野、渡辺(部会員)、守屋(事務局)
・ コーディネータ:山下部会員(アルソア)


■企業概要
 

・ 設立:1998年7月(創立:1972年)
・ 資本金:2億7千万円
・ 代表者:代表取締役社長 滝口友樹哉氏
・ 売上高:168億円(2000年度実績/税抜)
・ 従業員数:270名(男160名/女110名)
・ 事業内容:化粧品、健康食品、浄活水器の研究開発および独自の組織による訪問販売
・ 企業理念:「自然法則に基づいた真の健康と幸福づくり」


■施設概要
 


・ 竣工時期:1998年5月
・ 設計:マリオ・ベリーニ(Mario Bellini Associati sri)
・ 敷地面積:31674平方メートル
・ 建築面積:3839平方メートル
・ 延床面積:8550平方メートル
・ 階数:地下1階、地上4階
・ 収容人員:約400人
・ 入居組織機能:本社機能、研修機能、研究機能
・ 保有設備機能: (1)来客・販売員とのコミュニケーション・・・ロビー、研修室、ロビーBAR等
(2)社内コミュニケーション・・・特別会議室、プロジェクトルーム等
(3)中核的コミュニケーション・・・屋上エアガーデン、ホール、レストラン等


●自然と共存する姿勢を貫くビジネス拠点
 
初秋、小淵沢周辺の景色は幾分秋らしく紅葉が混じり始め、まさに行楽シーズンを迎えようという時期でありましたが、当日はあいにくの行楽気分を踏みにじる冷たい雨。少し肌寒い中、昼過ぎに集合場所の小淵沢駅に到着。早速、アルソアの山下さんがバスにて小淵沢駅までお迎えに来てくださいました。
駅の待合室で山下さんから「もしタバコを吸われる方がいらっしゃいましたら、この場で吸ってから行かれたほうが良いと思います」とご提案。幸い我々一行には喫煙者はいなかったものの、本社敷地から施設内は完全禁煙であることを予め把握しておいてもらうための事前通知です。さすがに社長自らが明確なコンセプトと行動力をもって、自社のビジネスや製品のアイデンティティを推進する徹底した経営が実行されていることを早々と感じさせられました。
本社建物に到着してすぐに、施設内レストランにて昼食をご馳走して頂きました。
施設内レストラン
昼食時をすぎれば会議室となる食堂

当日はあいにく小雨模様で体験はできませんでしたが、晴れた日は緑豊なガーデンテラスで昼食ができるとの事です。
食堂は、直営の美容学校の学生さんの食堂にもなっていますが、昼食時間帯をすぎれば食堂はそのまま、ケータリング付のミーティングルームに早がわりという効率の良さで、豊な自然環境ならではの余禄かも知れません。
オープンテラスの食堂
あいにくの小雨でしたが、晴れた日はオープンテラスの食堂

シェフが腕によりを掛けて作る自慢の料理は、勿論有機食品の健康食。その素材は自社の農園で作る正真正銘のオーガニックな食材です。当日のメインディッシュは「地鶏の蒸し物 味噌風味」。自然なエサと広い環境で育った地鶏の肉に、自家製(自社製)味噌で味付け。特にこの味噌は自社農園で採れた豆に玄米麹を混ぜて寝かせた今年のできたて、自信作とのことです。つまり「手前味噌」ということです(頼もしいシェフのご説明より)。とにかく美味しさと健康を獲得するコンセプトはここでも徹底されていました。
うかがえば、本当の美とは体の中から作り上げる健康美であり、自分たちが本当に良いと感じるものだけをお客様にお勧めするのが基本的な考えとのことで、昼食を頂いて改めて感じ入る部会員諸氏でありました。
(ここだけの話ですが、事務局員の某氏は現在ドクターからイエローカードをもらってダイエット中にも関らず、玄米ご飯と味噌汁をおかわりして、おいしそうにぱくついておりましたが。 ...いいのかなあ?)
自然食をベースとした健康食
有機野菜など自然食をベースとした健康食

●迫力とこだわりのマリオ・ベリーニブランド
 
 アルソア本社は小淵沢駅から車で10分程度のところで八ヶ岳公園道路から見える位置に建てられています。マリオ・ベリーニ氏デザインによるねずみ色のコンクリート打ちっぱなしの壁面を持つその特徴的な建物は、周辺一帯の背の高い雑木林と高いレベルで調和していました。
建物はバランスの取れた直線と曲線によって大胆に構成され、そのために一企業の施設と言うより、まるでミュージアムを思わせる公共施設のように洗練されたパブリシティと圧倒的な迫力を我々に伝えてきます。建物の内側においても外観と同様に構成的なつくりで、これも同氏がデザインしたイス什器類が効果的に配置され、妥協を許さない完成度はここで働く人に自信と誇りを与え、訪れる人々に幸福感をもたらしてくれそうな空間のパワーを感じさせてくれます。
その幾つかの証として、我々が案内される先々ですれ違う従業員やスタッフの方々から常に快活な挨拶を掛けて頂きました。
また皆さんはことごとく若々しく清潔感があり、都会的なセンスを兼ね備えていることにも驚きーました。これは社員教育の徹底以外にも彼女(彼)らにプラスの力を与える何かが存在しているーためと思われます。
建物は組織の機能に応じて大きく3つのブロックに分かれています。中央がオフィスやミーテーィングルーム、レストラン等を持つ「J CORE」。それを挟んで東側が研修のための施設を持つー「EAST WING」、そして西側はアルソア製品の全てについて研究を行う施設「WEST WING」があります。「J CORE」の屋上にはAIR GARDENが存在し、中央は丸い池、その周りが客席、 そしてその一角には屋外ステージが造られ、暖かいシーズンには雄大な南アルプスを背景にコンサートが催されるとのこと。
屋外ステージ
正面に甲斐駒を望む屋上の屋外ステージ

最も驚いた(特異に感じた)のが「J CORE」2階のセンターにあるCORE ROOM。巨大なお正月の鏡餅風のドームで、ここにこのエリアのパワーが集中されるとのこと。その内外の全ての面が銀和紙で覆われており、ドーム内側には20席くらいのイスが設置され、ここに人々が集まり気持ちをリラックスさせ集中させるとか。んー、これもマリオ・ベリーニブランドか?
ドームの概観
銀の和紙で覆われたドームの概観

●アルソアのセンターとしての存在感=アイデンティティ
 

ひととおり施設や事業の内容等をご紹介いただいて、美しさや健康という人間の基本的な欲望に立ち向かうビジネスとして、アルソアではただ単に利益追求に奔走するのでないということが理解できます。そこで働く人はまず美しく健康でなければならないとして、設備の充実と社員教育を図り、それが原動力となって、企業と人そして営業店へと、人のつながりを強固にし、情報ネットワークシステムがそれをサポートすることで、会社の製品販売を円滑化し促進させている企業です。
またIT導入に動揺する今日の多くの企業から悪影響を受けることなく、自らの判断と選択により、訪問販売という地道な方法を推進しながら、事業拡充に必要なネットワーク基盤を整備し、着実に顧客数と収益を増やしていることにも経営的視点で学ぶべきところが多分にあります。
この小淵沢という自然環境に恵まれた美しいロケーションにおいて、これほどまでにアイデンティティ獲得に徹底し、現実にこれほどに元気で洗練された組織(人々)と建物と場が存在し、そして総合的にビジネスが成功し成長していることに終始圧倒され、短い時間でしたが、ちょっと幸福な気持ちになれた見学会でした。
アルソアの山下さん、そしてスタッフ及び従業員のみなさん、ありがとうございました。