キャンパスFM研究部会 (SCM06)  【施設事例研究】

大学での新たな教育展開と社会ニーズに対応した
FM実践事例と手法の調査研究
ならびに大学教職員へのFMの浸透
部会長
部会長:興津 利継
株式会社FOR代表取締役
認定ファシリティマネジャー
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学生本位の学びの場 オンライン授業 通学する魅力・価値 学生数の減少
ダウンサイジング カーボンニュートラル・ZEB 基本金・減価償却・積立率 
 
サマリー 大学は、我が国の成長を支える存在であり、教育・研究に成果を出しながら経営を継続する必要があるが、進学者数減少期を迎え、淘汰される大学も散見される厳しい時代になってきた。各大学の置かれたポジションによって取るべき施策は異なるが、学生本位の学びを実現し、学生に選ばれる魅力を持ち続けるべきこと、そして、経営から見て持続可能な水準・内容に施設投資をコントロールすべきことは共通である。
当部会では、経営資源の多くを振り向けているキャンパス施設を『経営にとって最適な構成・状態・運用にする』ことがFMであるとの認識に立ち、計画手法や施設系課題の先進事例を調査して情報提供を行い、財務視点から考えるFMの書籍も発刊してきた。現状は、後述のとおり、大学のDX・GXの動向や先進事例を通じて、今後の大学のあり方の調査研究を進めている。
活動内容 施設系課題の先進事例の対象は時代と共に変遷してきた。振り返ると、具体的には、
 ・大学キャンパスの都心回帰事例
 ・主体的な学びを促進するための場づくり
 ・省エネ方策の実践事例
などの調査を実施した。また、健全な施設経営を進めるために、施設への投資や経費の意味・位置づけ、施設方策など、若手事務職員の方に知って頂きたい内容を、財務視点からまとめ、
 ・書籍「財務視点から考える私立大学のファシリティマネジメント」の発刊
も行った。現在は、
 ・オンライン授業、学びのデジタル活用等を背景に大学設置基準が改正された結果、施設構成に生じる変化の調査
 ・カーボンニュートラルやSDGs実践事例を通じたキャンパス施策のあり方の調査
を継続している。

※定例会開催日程(原則) 第2または第3火曜日16:30〜18:30、年11回
成 果 2021年度は前年に出版した「財務視点から考える私立大学のファシリティマネジメント」の出版記念セミナーを実施し、その重要性を普及するように努めた。秋の夜学校およびFMフォーラムでは大学でのSDGsの先進的な取組み事例を紹介した。
2022年度は、コロナ禍で広まったオンライン授業に関する諸機関の調査結果、同年秋に施行された大学設置基準改正の背景・内容などを情報収集・整理した。更に、オンライン授業を積極的に取り入れている早稲田大学へのヒアリング、学生本位の学びの場を構築した明治大学和泉キャンパスラーニングスクエア棟、桜美林大学新宿キャンパスの視察を行い、それらから読み取れる大学キャンパスの今後の方向性について検討を行い、FMフォーラムにて報告を行った。

※研究成果の詳細を閲覧することが可能です: 「研究成果 他」の項目へ
メンバー 部会長:興津 利継(FOR)
副部会長:大谷 英継(文京学院)
部会員:池田 磨佐人(三井不動産) 和泉 隆(帝京大学)
    一箭 憲作(Ichiya&Associates) 扇谷 圭一(東北大学) 大野 和夫(立教女学院)
    岡田 隆信(東京海上日動ファシリティーズ) 岡本 仁志(個人)
    小永井 耕一(東京都環境公社) 近藤 眞道(大成建設) 佐藤 賢治(中京大学サービス)
    難波 茂(廣池学園) 藤村 達雄(東京音楽大学) 本田 和馬(立命館)
アドバイザー:恒川 和久(名古屋大学)
事務局:大野 高幸(JFMA)

2023年度のテーマと活動内容 【活動計画】

メインテーマ

大学は、進学者数の減少期を前に、ガバナンス強化や教育の質向上に加えて、ドメインの再構築も含めた生き残り方策の実施など、戦略的な経営が求められている。
オンライン授業の継続活用は一部の大学・授業に限られており、私大連の提言に示された「空間と時間からの解放」につながる顕著な動きは見られないが、2022年10月の大学設置基準改正に則った運用面、施設面の改善例が徐々に出てくるものと予想される。
SDGs、カーボンニュートラル対応には多くの大学が賛同しており、既に取り組みを開始した大学も増加している。
当研究部会では、これらの変化の方向性を調査・検討し、今後のキャンパスFMのあり方を提言できるよう活動を続ける。

活動計画

  1. 新たな教育展開を踏まえたファシリティのあり方、方向性
    当部会の活動として、
     ・大学設置基準改正に基づいた各大学での施策
     ・同上の特例制度を活用した先導的取組の申請内容
     ・オンライン授業を積極推進する大学での施設構成ニーズの変化
    などの情報収集を続け、整理・分析とともに、施設の更新・整備のあり方について検討を加える。
  2. SDGs、カーボンニュートラルを実現するための施設改善
    “カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション”で
    「大学の形態・特性に応じた脱炭素化モデルの構築」を纏める予定になっており、その情報収集を行うと共に、省エネ先進事例も含めた情報収集を行う。整理・分析にあたっては、施設構成ニーズ変化を踏まえたキャンパス全体の合理化を視座にいれて検討を進める。
  3. キャンパスFMが教職員の自分事となるための提言
    健全な大学経営の維持に必要な積立率は既に100%を大きく下廻り、入学者が定員を下回れば経営危機も視座に入る時代になった。支出に占める施設関連費用は高く、今後は施設のダウンサイジングと効率的活用が求められる。それには、教員による占有スペースの費用認識、職員の工夫による講義室の稼働率向上など、教職員がFMを自分事とする必要があり、その結果として必要機能を再配置して老朽施設を停止・解体することも可能になる。また、学修者本位の学びへの移行による教育プロセスの変化はファシリティの変化に繋がるので、活動計画1〜2のエッセンスも加えて、全教職員に向けた「キャンパスFMを自分事とするための提言」を作成していく。
  4. 書籍「財務視点から考える私立大学のファシリティマネジメント」の販売促進
    在庫のある本冊子を、大学教職員に購入してもらえるように、日本教育新聞、全私学新聞、月刊誌「大学マネジメント」、「学校法人」、季刊誌「教育と施設」、教育情報共有会(株式会社マインドシェア:西澤陽介氏)、フェイスブック「大学職員しゃべり場」「大学ニュースクリップ」等に情報提供を行う。
  5. 新版キャンパスFMガイドブックの構成検討
    初版、2008年版が出た時代と現在との違いを明確にし、追加・削除すべき項目を検討する。活動計画1〜3の検討を進めながら、新版のガイドブックの構成内容を検討していく。
     

2022年度のテーマと活動内容 【活動実績】

活動報告

  1. 新たな教育展開を踏まえたファシリティのあり方、方向性
    ファシリティ施策(キャンパス全体のIoT方策、稼働率が下がる教室・研究室への対応、教室構成の変化への対応、郊外キャンパスの活かし方等)や運用方策の先行事例の収集・調査を行うべく、以下のとおり、明治大学、桜美林大学への現地視察、早稲田大学 森田教授へのオンラインによるヒアリングを実施した。本テーマの検討と視察・ヒアリングにあたり、2021年の私立大学連盟の提言、文部科学省による全大学授業方針調査、2022年10月の大学設置基準改正等を参考にし、FMフォーラム2023でもその概要を報告した。
    また、SDGs、カーボンニュートラル等の施設改善課題については、2022年度秋の夜学校で「サステナブル時代のキャンパスFM」と題して、文献等の調査を行い、大学の施設・管財担当者のための初級講座として情報を発信した。
     
    (1)_明治大学 和泉キャンパス ラーニングスクエア棟
     【現状分析】
     ・和泉キャンパスの全建物の空間を分類し、不足する空間を把握。
     ・学生の動きを観察、図書館、食堂からの学び
     【コンセプト】
     ・学生たちがいつでも気軽に来やすく親しみやすい空間
     ・吹抜け空間を一つの広場と捉え、学生たちが集まりやすい仕掛け
     ・「ここで勉強したらかっこいいな」と思えるようなスタイリッシュな空間、
      居心地が良くて長く滞在できる空間
    (2)_桜美林大学 新宿キャンパス
     【コンセプト】
     ・ビジネスマネジメント学群のための新キャンパス
     ・従来から企業連携に注力。より協力を得やすい都心部に進出。
     ・IT技術を活用し、実習の促進や学生の気づきを高め、リアリティある学修を推進。
    (3)_早稲田大学(森田教授:大学総合研究センター副所長)
     文科省調査で「コロナ禍と関係なく3割の遠隔授業を取り入れる」と回答した早稲田大学の状況・考え方・体制を知るべく調査を実施。森田先生個人の意見ではあるが「ハイタッチなコミュニケーションの場は必要であり、人が人に教える意義は薄れない。キャンパスは中心的な場であり続ける」等の話を伺った。
     
  2. キャンパスFMが教職員の自分事となるための提言
    秋の夜学校やフォーラムなど諸活動を通じて、提言の具体化に向けて準備を進めている。
  3. 書籍「財務視点から考える私立大学のファシリティマネジメント」の販促
    日本教育新聞、全私学新聞等のメディアへ広告掲載に関して打診を行ったが、書籍の販促には繋がらなかった。2023年度以降も販促方法も検討しながら、引き続き、販促活動を行う。
  4. 新版キャンパスFMガイドブックの構成検討
    2022年度は、他の活動に終始し、具体的な検討に入れなかった。2023年度は、初版、2008年版が出た時代と現在との違いを明確にし、2008年以降の文部科学省発行資料、当研究部会の活動成果を踏まえて、追加・削除する項目を検討する予定。(必要に応じて分科会の設置も検討する。)
     

研究成果 他

ファシリティマネジメントフォーラム ※ JJ:JFMA機関誌「JFMA JOURNAL」掲載

FM初心者向け秋の18講座・FM秋の夜学校(調査研究部会公開セミナー)

書籍・報告書 他